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高木 桂佑

急成長中のスーパーロピアは、なぜ通いたくなるのか?事業戦略に結びつくブランド設計とは。

Brandingブランド設計はじめてのブランディング

札幌に暮らしている私は昨年頃から、「ロピア行った?」という会話を耳にする機会が増えました。
この記事を読んでくださっている皆さまの中にも、一度は足を運んだことがある方が多いのではないでしょうか。

2024年に北区・屯田へ北海道1号店が上陸して以来、福住、琴似、清田、そして2026年1月には中の島と、驚異的なスピードで店舗を拡大しているスーパーマーケット「ロピア」。
各店舗、オープン初日には行列ができ、店内はカゴいっぱいに商品を詰め込む人々で溢れます。

既存の有力スーパーがひしめく北海道において、なぜ後発のロピアがこれほどまでの話題を生み出しているのでしょうか。

「安いから」
「コストコみたいで面白いから」

確かにそれらが理由でしょう。
しかし、ブランディングの視点でその裏側を覗いてみると、
Why(存在意義)

How(提供価値)

What(具体的施策)
が一貫しているブランド戦略と、それを実現する事業戦略が見えてきました。

今回は、ロピアが札幌で巻き起こしている現象を、ブランディングの視点から考察していきます。

Why:ブランドアイデンティティ|社名に込められた「ユートピア」の意味

みなさんは、社名でもあり、スーパーマケットの店名でもある「ロピア」の意味を知っていますか?

実は、ロピアという名前は「Low Price Utopia(ロープライスユートピア)」の略語なんです。

創業者の高木勇輔氏が精肉卸で起業し、「卸のスケールメリットを一般消費者にも還元したい」という思いを掲げたことが、ネーミングの原点となっています。

ここで注目したいのは、彼らが単なる「安売り店(ディスカウントストア)」ではなく、あえて「ユートピア(理想郷)」という言葉を使用している点です。

※ロピアでは、ユートピアを
「楽しくて、感動していつも行きたいところ」と定義しています。

スーパーマーケットの至上命題である
「同じ商品ならより安く」
「同じ価格ならより良いものを」
というジレンマの中で、「ユートピアのように、楽しくて感動できる買い物体験」を作ること。

どうやらこの体験設計こそが、ロピアが他のスーパーと異なるブランド連想を獲得している核となっていそうです。

ロピアの公式サイト等では、「食生活応援企業」という言葉が掲げられています。
また、ロピアの各店舗の看板や店内の掲示物のいたるところに、「食生活❤︎❤︎ロピア」という言葉が記載されています。

Screenshot

この言葉は、単に機能としての安さを訴求するのではなく、
「安く買い物ができることで、自分の生活がどのように豊かになるのか?」
という、その先にある未来を示唆しています。

もう少し具体的に言うと、
食生活を応援する。という言葉は、「安く食材が手に入るロピアがあることで、家計に余裕が生まれ、食卓が豊かになる」という、
明確な存在意義=Whyを示しているということです。

ブランディングにおいて重要なのは、このように「自分たちは何者で、何のために存在するのか」という「あるべき姿」を定義することです。

ちなみに、ロピアのメインターゲットは、食べ盛りの子供2人がいる4人家族です。

だから、
◯大人にとっては、安くてワクワクする買い物体験
◯一緒に買い物について来た子供にとっても、ワクワクする店内の仕掛け(後述)

これらを「ユートピア」という言葉で横串をさす、様々な施策を行うことで実現しています。

HOW:ブランドの戦略|全国で実証された「勝てる一貫性」の横展開

ロピアは「新しくて話題」という一過性のブームに見えるかもしれませんが、ロピアの戦略はすでに神奈川・東京を中心とした関東圏、そして関西、中部、さらには台湾と、各地で同様の現象を起こしてきた「実績のあるブランド設計」に基づいています。

ロピアのブランディングが秀逸なのは、「ブランド設計が事業戦略そのものに食い込んでいる」点にあります。

彼らの提供価値(How)を、大きく以下の3点に整理してみます。

==============

①圧倒的コストパフォーマンス: 肉の卸をルーツに持つ強みを活かした、ファミリー層への徹底した家計応援。

②商品企画力: 現場のチーフが仕入れや価格を決定する「個店主義」が生む、鮮度と独自性の高さ。

③食のテーマパーク(体験): 買い物を体験ととらえ、「エンターテインメント」に変える演出。

==============

これらは3つのコンセプトを掲げるだけに過ぎず、全国どの店舗でも高い再現性を持って実行するために、これらを複合的に実施する「仕組みづくり」を行なっているのです。

提供価値を高める、独自の仕組みづくり

ロピアの売場を見渡すと、精肉なら「肉のロピア」、鮮魚なら「魚萬」といったように、各コーナーに個人商店のような屋号が付いていることに気づきます。

青果売場
鮮魚売場
精肉売場
惣菜売場①
惣菜売場②

一般的なスーパーでは、本部のバイヤーが買い付け、各店舗の店長が販売を指揮するのが通例です。
しかし、ロピアは各売場のチーフが自ら買い付けを行い、販売価格まで決定する「事業部制」を採用しています。

各事業部が地域に合わせた商品展開やプライベートブランドの開発まで手がけており、この徹底した現場主義こそが、圧倒的な「商品企画力」と「高コスパ」を支えるエンジンなのです。

ロピアは事業部制を採用することで、仕入れ、陳列、価格設定まで、現場のプロがその街のお客様のニーズを的確に掴んで反映させています。
その中でも特にユニークなのは、店内にずらりと並べられた手書きのPOPです。

マグロ一つでも、ラベルシールのコメントがここまで違う
「!!!!」というラベルシールの言葉。無意識のうちに、注意を向けられます。

何気なく店内を見ていると、商品に貼られているラベルシールも画一的な言葉ではなく、現場スタッフが「どうしたら商品を手に取ってもらえるか」ということを考え、かつ、お客を楽しませようという遊び心あふれる言葉が多いことに気がつきます。

このように、

WHYである「家族の食生活を応援するロープライスユートピア」というあるべき姿を実現するために、

HOWである、①圧倒的コストパフォーマンス、②商品企画力、③食のテーマパーク(体験)という軸に則って価値を作る。

その具体的な方法は、現場に裁量を持たせて委ねる。
という経営方針が見えてきました。

あるべき姿(Why)が定まり、どのように価値を届けるか(How)が明確だからこそ、現場スタッフも必然性を持って判断ができるようになる。と言えるでしょう。

WHAT:具体的施策|ターゲットの日常を撃ち抜く「不便」と「認知」の設計

先述したユニークなラベルシール以外にも、ロピアの店内では3つのHOWを様々な施策で実現しています。
このセクションでは、実際に一人の客として買い物に行って発見した施策を紹介していきます。

買い物の不便さは、「引き算」の戦術

ロピアでは一見、顧客利便性を損なう施策と思えることがいくつかあります。例えば、

◯完全現金払い(キャッシュレス非対応)
◯100円硬貨が必要なカート
◯飲料の冷蔵ケース撤廃(常温販売)

などです。

なぜこのような施策なのかを考えてみると、それは、ロープライス・ユートピアであり続けるために、できるだけ商品価格を下げるという極めて「必然性」のある判断だと気付きます

◯完全現金払いにすることで、クレジットカードやアプリ決済を行う際の数%の手数料を削る

◯カートに100円を投入し、必ず綺麗に整列されて戻ってくる仕組みによりカート回収の人件費を削る

◯飲料の常温販売をすることで電気代を削る

これらによって削られたコストを価格に反映しているのです。

「店内の便利さ」の優先順位を下げ、ブランドの生命線である「圧倒的な安さと質」に注力することで、HOWの①である圧倒的なコストパフォーマンスを実現しているのです。

「食のテーマパーク」としてのユートピアの体現

ロピアが定義するユートピアとは、「楽しくて、感動していつも行きたいところ」。
これは大人だけでなく、メインターゲットである家族連れの「子供たち」に対しても徹底されています。

店内を見上げると、天井付近をミニチュアの機関車が走り、壁面には賑やかなイラストや、各コーナーを象徴する装飾物が溢れています。

買い物に付き添う子供が飽きない工夫を施すことで、家族全員にとって「また行きたい」場所にする。
これも、ブランドコンセプトを体現している施策の一つです。

無意識に刷り込まれる「メッセージの一貫性」

また、店内の装飾物やチラシの隅々に至るまで、「お客様主義」「食生活応援」といった文言がこれでもかと散りばめられています。

普段、お客様はこれらの一つひとつを意識して読んでいるわけではありません。
しかし、あらゆる接点でこのメッセージに触れ続けることで、「ロピアは自分たちの生活を応援してくれる存在だ」というブランドイメージが、無意識のうちに深く醸成されていきます。

さらに、認知施策においてもその一貫性は揺るぎません。
ロピアが『サザエさん』のCM枠で広告を打つのは、同番組が親と子が一緒に見る「共視聴」の割合が高いためです。「日本全国の家計を助けたい!」というメッセージを、ターゲットである家族が揃う時間に届ける。

チラシの「家計応援価格!」という赤見出しや、店内放送の「日本一の食費節約スーパーを目指します」という宣言も、すべては「安売りの理由をブランドメッセージとして納得化させる」ための緻密なWhat(施策)なのです。

おわりに

北海道には、アークス、イオン、コープさっぽろといった、地域に深く根付いた強力なライバルが存在します。
その中で、私たちが「ロピアはなんかワクワクする店だ」と感じる理由。

それは、

=========================

Why: ロピアがあることで、家計に余裕が生まれ、食卓が豊かになる
How: コストパフォーマンス、商品企画力、食のテーマパーク
What: 現金主義、個店主義、常温販売、ターゲットを絞った広告戦略

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という一環したブランド設計にありました。

ロゴを綺麗にしたり、イメージを良くしたりすることだけがブランディングではありません。
ロピアのように、「自分たちのあるべき姿を定め、それを実現するために、何を捨て、何を研ぎ澄ますか」を戦略立てていく経営判断そのものが、強固なブランドを作っていくのです。

あらゆる事業において、どうしても具体的施策(WHAT)ばかりに気を取られ、良かれと思って実施している施策が実はブランドの核をぼやかしてはいる、ということがよくあります。
そんな時に、「なぜ、存在するのか?」、そして「どのように価値を届けるのか」と、立ち戻ることができる指針があれば、一つひとつの判断に必然性が生まれ、強いブランドを築き上げていくことができるのです。

commonoでは、ブランディングのご相談を随時受付中です。

私たちcommonoも、様々なクライアント様とブランディングのお仕事をさせていただく上で、まずは「なぜそのブランドが存在するのか」というあるべき姿を言語化する作業からご一緒させていただくことが多いです。

ロゴのデザインやWebサイトの制作といったアウトプットは、あくまでブランドの想いを届けるための「手段」に過ぎません。

その手前にある、企業の根幹となるMission(使命)やVision(目指す姿)、そして顧客に提供する独自のValue(価値)を定義し、一貫性のある戦略へと落とし込む。
この「上流工程を設計し、アウトプットまでワンストップで行う」ことが、私たちの強みです。

もしも今、「新しい施策を打っているけれど手応えがない」「自社の強みをどう言葉にすればいいか分からない」と感じていらっしゃるなら、それは「Why」と「What」を繋ぐ羅針盤が必要なサインかもしれません。

ロピアが「ユートピア」という旗印のもとで熱狂を生んでいるように、貴社だけの「あるべき姿」を共に描き、事業を次のステージへと進めるパートナーとして伴走いたします。

Branding

 

Written by

高木 桂佑 Keisuke Takagi

director

1997年 釧路生まれ札幌育ち。地域に関わる企画の仕事がしたいという思いで、函館の地域プロデュース会社に入社し、事業企画や店舗の立ち上げ、コミュニティイベント運営などを担当。約4年間の勤務後、半年間のフリーランス期間を経て、2025年にcommonoに参加。以降ディレクターとして、主に企画のプランニングやディレクションなどを担当している。

Q1. commonoに参加した理由
デザインに関するコンセプト等の設計だけではなく、企画・戦略立案からマーケティングプランニングまでを当たり前のように考える社内カルチャーに面白みを感じたから。
Q2. わたしの偏愛
パスタと音楽が大好きです。アルミフライパンを持っており、週に2~3回はパスタを作ります。音楽はオルタナティブ・ロックが好きで、ライブにもよく行きます!
Q3. 今後commonoというフィールドでやりたいこと
北海道のクリエイティブを産業化していくために、会社の垣根を超えて学び・つながり・高めあう。そんな文化を札幌の街につくっていきたいです。

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