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高木 桂佑

M-1グランプリはなぜ熱狂を生むのか? ②ファンを巻き込み、コンテンツの発信量と熱量を増やすマーケティング戦略

Brandingはじめてのブランディング

第1回では、M-1グランプリが如何にして芸人の生き様をコアに据えたブランド体験を設計したかを紐解きました。いわゆる「戦略」にあたる部分です。

「M-1グランプリ」はなぜ熱狂を生むのか? ① 芸人の「生き様」をコアに据えたブランディングの力

しかし、どれほど素晴らしい戦略を設計しても、それが届き、広がらなければ熱狂には至りません。

M-1グランプリがバラエティ特番の枠を超え、社会現象とも言えるうねりを生み出している背景には、視聴者を単なる「観客」から、大会を共に作り上げる「当事者」へと進化させるマーケティング術がありました。今回はデジタル施策とファンとの共創という視点から、その裏側を探っていきます。

若年層のテレビ離れに対する「関わりしろ」をつくる仕掛け

今では若年層から人気も高いM-1グランプリですが、大会が再開して間もない2016年当時は若年層のテレビ離れが喫緊の課題でした。
そこで2018年に取り組んだのが、当時急成長していたTikTokを活用した体験型コンテンツです。

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※画像参照元:https://natalie.mu/owarai/news/308249

特に画期的だったのは、スマホ画面を2分割して他ユーザーとコラボできるTikTokのデュエット機能の活用でした。
芸人と一緒に漫才ができるという参加型コンテンツを展開するため、芸人にはTikTok専用にネタを撮影してもらい、ユーザーはまるで芸人とネタを行なっているかのような動画がTikTok上で完成する、というコンテンツが実施されたのです。

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※画像参照元:https://natalie.mu/owarai/news/308249

トレンドを抑え、若者が楽しむことができるコンテンツを生み出したしたことで、10代の視聴者数は劇的に増加。事前にデジタルで盛り上がりを作ることで、本番への期待値を最大化させるという、戦略が見事に成果に繋がった仕掛となりました。

 

2025年大会においては、「M-1 2025 イラストグランプリ!」というコンテンツが開催されました。
これは、決勝戦で心を動かされたシーンを、手書きやAIなど手法を問わず画像化してSNSに投稿するというもの。生成AIの普及が加速した2025年の時代背景を反映し、漫才中のフレーズや印象的なシチュエーションをGeminiに入力することで、瞬時にビジュアル化されるという「体験」が設計されました。

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※画像引用元:https://www.m-1gp.com/illustgp2025/

この施策の最大の狙いは、視聴者を単なる「受け手」から、自らコンテンツを生み出す「制作者兼拡散者」へと昇華させること。 生成AIに対する一部のネガティブな風潮も相まって、SNS上では賛否両論が巻き起こりましたが、XやInstagram上での二次拡散の質が大きく変化しました。
自ら生成した画像をシェアするという行動は、強力なフックとなり、実際にいつくかの投稿は爆発的なシェア数を生み出しました。

実際にシェア数が多かった投稿例↓

ファン心理を活用したプロモーションの拡散力の強化

M-1グランプリには、非常に熱量の高いファンが全国に存在します。
運営側はこのファンを「広報パートナー」と捉え、彼らが思わず語りたくなるコンテンツを設計しています。

その象徴が、2017年から本格導入された「三連単順位予想キャンペーン」です。

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※画像引用元:https://www.m-1gp.com/sanrentan/

単なる人気投票ではなく、決勝の1位〜3位を予想するこの企画。自分の予想をSNSでシェアする仕組みは、「推し」を応援する気持ちと「自分の目利きを証明したい」(=ドヤりたい)という心理を絶妙に突き、放送前から膨大なユーザー生成コンテンツを生み出しています。

また、順位予想が的中した人の中から抽選で「M-1オリジナルグッズ」をプレゼントするなど、インセンティブを設計することで参加者数を増やしています。
「まずはファンを徹底的に喜ばせ、その熱量をレバレッジにして情報を拡散する」。
このファンを起点とした共創の姿勢が、プロモーションの拡散力を支えていると言えるでしょう。

プロセスを公開し、ファンを共創の当事者へ進化させる

M-1の熱狂を支える重要な要素の一つに、徹底したプロセスの公開があります。
決勝大会を「点」で見せるのではなく、数ヶ月に及ぶ大会の道のりを「線」で共有することで、応援する芸人の結果を長期間に渡って追い続けたり、期待値を高め続けるという意味で、ファンをともに大会の盛り上がりをつくる共創者として巻き込んでいます。

具体的には、予選1回戦から準決勝までの全ネタを公式YouTubeで配信し、まだあまり名前が知られていない芸人を発見する喜びや、応援する芸人の結果を追いかけるなど、ファンそれぞれがプロセスを楽しめるように設計されています。

また、敗者復活戦での会場投票や、2022年から導入された、TVerで公開されているネタ動画を視聴した視聴者によるネット投票によって、上位の芸人1組が準決勝へ復活できる「ワイルドカード」など、視聴者の1票が運命を変える仕組みも導入。

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※画像引用元:https://www.m-1gp.com/wildcard/

これらにより、数ヶ月間、YouTubeで彼らの歩みを追いかけてきたファンにとっては、決勝のステージはもはや他人事ではなくなり、さらに大会への没入間が強まっていくと言えるでしょう。

 

また、大会終了後1週間後には、ファイナリストの決勝当日に密着した「アナザーストリー」を公開。
その後は人気番組「千鳥の相席食堂」にて相席-1グランプリの開催、その後も「ファイナリストの帰り道」など、M-1公式のyoutubeチャンネルや、ABCテレビが制作する人気番組など、保有するあらゆるアセットを使用しながら継続的にコンテンツを発信し続けています。

聖地・六本木に刻む「芸人の激励」とデジタルへの波及

M-1のOOH(屋外広告)戦略もまた、デジタルでの拡散を計算して設計されています。

決勝の地であるテレビ朝日のお膝元・六本木駅での広告掲示は、単なる告知物としての役割を超えています。
まだ売れていない芸人たちは電車で移動することも多く、そんな彼らにとっての激励を込め、毎年メッセージ性のある広告が掲示されているのです。

※画像引用元:https://www.advertimes.com/20251217/article528252/

芸人が自らポスターの写真を撮り、SNSにアップする。
それを見たファンが現地に駆けつけ、さらに拡散が広がる。
OOHを「広告物」ではなく「コンテンツ」として捉え、SNSでの二次拡散を前提としたクリエイティブを展開することで、広告枠の金額を遥かに超える価値を創出しています。

おわりに

2回にわたって考察してきたM-1グランプリ。
そこにあったのは、揺るぎないブランドの核を定めるブランド設計と、それをファンの手元まで届け、熱狂を増幅させる共創のマーケティング戦略でした。

私たちcommonoも、クライアントが持つ「なぜ存在するのか」という本質的な価値を掘り起こし、それを一貫性のある戦略で形にすることで、ユーザー体験へと変えていくプロセスを大切にしています。

今回のM-1の事例からもわかる通り、素晴らしいプロダクトや志があっても、ターゲットが「自分事」として捉え、語りたくなるような導線がなければ、その価値を最大化させることは容易ではありません。
ブランドの「あるべき姿」を定義することと、それを届ける「仕組みをつくること」は、事業成長において切り離せない両輪なのです。

「自社の強みをどう言語化すべきか」「ファンに届くコミュニケーションはどう設計すればいいのか」。
もし、そんな漠然とした課題感をお持ちであれば、ぜひ一度ご相談ください。
commonoが、あなたの事業の「あるべき姿」をコアに据えた、一貫性のあるブランド戦略を共に描いていきます。

Branding

Written by

高木 桂佑 Keisuke Takagi

director

1997年 釧路生まれ札幌育ち。地域に関わる企画の仕事がしたいという思いで、函館の地域プロデュース会社に入社し、事業企画や店舗の立ち上げ、コミュニティイベント運営などを担当。約4年間の勤務後、半年間のフリーランス期間を経て、2025年にcommonoに参加。以降ディレクターとして、主に企画のプランニングやディレクションなどを担当している。

Q1. commonoに参加した理由
デザインに関するコンセプト等の設計だけではなく、企画・戦略立案からマーケティングプランニングまでを当たり前のように考える社内カルチャーに面白みを感じたから。
Q2. わたしの偏愛
パスタと音楽が大好きです。アルミフライパンを持っており、週に2~3回はパスタを作ります。音楽はオルタナティブ・ロックが好きで、ライブにもよく行きます!
Q3. 今後commonoというフィールドでやりたいこと
北海道のクリエイティブを産業化していくために、会社の垣根を超えて学び・つながり・高めあう。そんな文化を札幌の街につくっていきたいです。

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