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高木 桂佑

店舗コンセプトを体験へ。アウター・インナー両面から育む店舗ブランディング

Branding飲食ブランディング

店舗の「ブランディング」と聞いたとき、何を思い浮かべますか?

洗練されたロゴマーク、統一感のある内装デザイン、おしゃれなメニュー表、あるいはSNS広告など。こうしたビジュアル(見せ方)を整えることをブランディングだと捉えていませんか?

ビジュアルを整えることは、あくまで手段の一部。そこに向かうプロセスの中で、「何を目指すのか」「どう在るべきなのか」を定義することが重要です。

店舗ブランディングとは、定義したコンセプトをリアルな体験として落とし込むことです

そこで重要になるのが、「ブランドアクション」という概念です。
ブランドアクションとは、掲げた理念やメッセージを言葉だけで終わらせず、具体的な行動として設計していく活動のことを指します。
(※ブランドアクションの基本的な考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています)。

とはいえ、少し抽象的に聞こえるかもしれませんね。
まずは、店舗×ブランドアクションを機能させている企業の事例を見ていきましょう。

店舗で実施するブランドアクションの例:Apple「Today at Apple」

Appleには、明文化された経営理念が存在しません。
しかし、1976年の創立以来50年間にわたり、「既存の規範に疑問を抱き、何ができるかを想像する人々から世界の前進は起こる」という一貫した信念のもとビジネスを営んできました。

その思いは、スティーブジョブズ氏によって、常にストーリーとして語り継がれてきたことでも有名ですよね。

この思想を、店舗というリアルな場で体験として落とし込んでいる事例が、世界中のApple Storeで展開されている無料の教育プログラム「Today at Apple」です。(https://www.apple.com/jp/today/) 

参照:https://www.apple.com/jp/today/

Appleは2017年、世界すべての直営店でこのプログラムを開始しました。


人々の創造性を刺激し、つながりを生む。
そのために、写真、動画、音楽、コーディング、アート&デザインなどの最先端のナレッジを学べる実践的なセッションを直営店で実施しています。
今では、無料で提供するプログラムとして、専門スタッフや外部のトップクリエイターから直接学び、参加者同士がインスピレーションを共有し合う場となっています。

単なる販促イベントではなくブランドアクションと捉えることができる理由は、製品の使い方案内や購入者向けの販促イベントとは異なり、「購入の有無に関わらず、誰もが無料で参加できる」という徹底したオープンな設計にあります。

参照:Today at apple

Appleの直営店担当シニアバイスプレジデント(当時)であったアンジェラ・アーレンツ氏は、ローンチの際に次のように述べています。

 

 

「Today at Apple」の体験の核心は、一般の方々が学び、それぞれの情熱を見つけ、周囲の人たちとつながりを持つことができるような「近代的なタウンスクエア(街の広場)」を創り出すことにあります。 (Apple Newsroomより引用)

 

 

製品のスペックを広告で一方的に伝えるのではなく、店内のスクリーンや製品を実際に使い、自らの手で作品を創り出すという体験を生み出し続けています。

さらにこのアクションは、インナーのエンゲージメント向上にも影響を与えています。現場のスタッフは、製品を売る販売員ではなく、地域の人々の才能を引き出すクリエイティブの伴走者という誇りと高いミッションを持って顧客に向き合うことができるからです。

※ちなみに、「誰もが参加できる」という点を体現するにあたり、補聴が必要な方向けの音声を聞き取りやすくするリスニング用ループの用意や、車椅子の方でも参加できるツアーなど、インクルーシなイベントとして設計されています。

企業の存在意義を、店舗というリアルな場を使って体験に落とし込む。
世界的企業のAppleから学ぶ、ブランドアクションの一つのヒントです。

街のカフェで実施したブランドアクションの事例

ブランドアクションは、Appleのような体力のある世界的企業だからできること、ではありません。
店舗や事業の規模に関わらず、コンセプトを体現する体験を設計することはできます。

今回は、私たちが運営する札幌のカフェ「POP/iN」にて実施したブランドアクションを題材に、小規模な店舗でも実践できる、アウター・インナー両面から設計した戦略の裏側を紐解いていきます。

2026年4月29日〜5月6日の間、札幌出身の画家・イラストレーター 田中マリナさんのPOPUP & WORKSHOPイベントを、POP/iNにて開催しました。

https://pop-in.jp/event/tanakamarina-popup-workshop/

POP/iNのコンセプトは、「街のロビー」。


この言葉には、ホテルのロビーのように、その街に暮らす人々、働く人々、訪れる人々が自然と交差し、この街に住まう方の生活の一部となりたい。という思いが込められています。

田中マリナさんとは、POP/iNで販売中のオリジナルドリップバックのパッケージのイラストを描いていただいているという接点がありました。

そんな田中さんが、アートを日々の生活の中でたのしむためのブランド「day’s」 を立ち上げられたというタイミングもあり、今回のコラボが実現しました。

一過性のイベントとしてではなく、「街のロビー」というコンセプトを体現する取り組みとなるように。


あたりまえの日常の中に、ちょっとだけ特別な時間が溶け込むよう、カフェを通じて街の人と人を繋ぐことも、POP/iNの役目である

と定義をし、街の人と人が交わることができる関わりしろを設計することを意識しました。

アウターの設計:街の人と人を繋ぐワークショップ

アウター向けの施策として設計したのが、POPUP開催前日に行った、街のこどもたちとの先行ワークショップです。

一般向けの開催に先立ち、まちで遊ぶ・まちから学ぶを掲げる保育園「こどもカンパニー大通り園」の園児10名をPOP/iNに招待し、店舗にとってのアイコンでもある大きなガラス窓を丸ごとキャンバスにして、花瓶と花を描いてもらうウィンドウアートを実施しました。

あらかじめ窓に描かれた真っ白な花瓶に対して、こどもたちは思い思いの色で模様を描いていきます。型にはまらない自由な発想で、窓一面がまたたく間に色鮮やかな模様で埋め尽くされていきました。

そして、POPUP開催初日には、こどもたちが塗った花瓶に対し、一般参加の街の方々が花を添えるというワークショップを実施。
そうすることで、この街に暮らす人たちが、ウィンドウアートを共創
する体験を設計しました。

 

店内にいるお客様はもちろん、通勤や通学などで毎日店舗の付近を歩く人々にとっても、ふと心が温まるような風景を創り出す。
参加したこどもたちや街の方々にとっても、自分たちの作品が街の一部になるという、ブランドらしさを象徴する体験をしてもらう。

こうして、「街のロビー」というコンセプトを私たちなりに体現していくブランドアクションを実施していきました。

2日間で完成したウィンドウアート

インナーの設計:スタッフを「当事者」に変える巻き込み

一方で、どれほど良い設計をしても、現場のスタッフがやらされ仕事になってしまっては顧客にブランドらしさは伝わりません。
スタッフが置き去りの企画は、インナーブランディングとしても逆効果です。


店舗体験の品質を決めるのは、どこまでいっても現場の「人」。
だからこそ、今回のPOPUPでは、店長と一緒に企画を進めました。
実は、こどもたちを巻き込んだワークショップは、彼女の元保育士というキャリアから着想したものです。


「街のロビー」というコンセプトを、現場の強みとどう掛け合わせるか。
なぜこの企画を行うのか。

という目的を何度もすり合わせてコンセプトの解像度を高めることで、インナー向けのコンセプトの浸透を図りながら、成功体験をともに味わうことができました。

ーー 店長の声 ーー

 

正直、これまでは「街のロビー」というコンセプトを頭では分かっていても、毎日の忙しい店舗営業の中で、本当に街にとってのロビーになれているのだろうか…と不安になることもありました。

でも、今回のPOPUPを終えて、「私たちが作りたい街のロビーって、こういうい景色かもしれない」と、実感できたことがとても嬉しかったです。

特にワークショップでは、実際に街のいろんな人が関わってくれました。
一生懸命絵を描いてくれるこどもたち、通りすがりに「何やってるの?」と足を止めて見てくれる人、完成した窓を見てくれるたくさんの方々。

みんなが喜んでくれる姿を近くで見て、私たちはどこにでもあるカフェじゃなくて、ちゃんと「この街のカフェ」になれているんだな、と温かい気持ちになりました。

想いを込めて企画をすれば、街の人はちゃんと振り向いてくれると自信になりましたね。
ただ、やはり店舗営業をしながら、アルバイトスタッフみんなを巻き込んで企画を形にしていくのは、想像以上に難しくて。。
ここはこれからの課題なので、みんなと一緒に、もっといいやり方を探していきたいです。

まとめ:ブランドアクションとして創る体験と成果

ブランディングとは、ロゴやデザインを整えるだけの話ではなく、なぜそのブランドを選ぶのかという、人の頭と心の中にある判断基準を設計する行為です。

だからこそ、今回のPOPUPは一過性のイベントで終わらせず、ブランドの資産として積み重なっていくよう、アウターにとってもインナーにとっても、ブランドを体現する体験として味わえるよう設計しました。

「街のロビー」というコンセプトをリアルに体現するため、街の人と人が関わり合える関わりしろをつくること。
その際、インナーへのコンセプト浸透も意識し、今回のキーマンである店長のキャリアや強みと掛け合わせて企画を検討すること。

これにより、インナーブランディングを兼ねながら、街に対してもPOP/iNらしさを体現する、ブランド資産として積み上がる体験を創ることができました。

私たちcommonoは、自社店舗での実践と検証をベースに、企業や店舗のブランディングも手掛けています。ブランド戦略やインナーの巻き込み方に課題を感じていらっしゃいましたら、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

ブランドのWhyを明確にし、成果を伴うアクションへと変えていきましょう。

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Written by

高木 桂佑 Keisuke Takagi

director

1997年 釧路生まれ札幌育ち。地域に関わる企画の仕事がしたいという思いで、函館の地域プロデュース会社に入社し、事業企画や店舗の立ち上げ、コミュニティイベント運営などを担当。約4年間の勤務後、半年間のフリーランス期間を経て、2025年にcommonoに参加。以降ディレクターとして、主に企画のプランニングやディレクションなどを担当している。

Q1. commonoに参加した理由
デザインに関するコンセプト等の設計だけではなく、企画・戦略立案からマーケティングプランニングまでを当たり前のように考える社内カルチャーに面白みを感じたから。
Q2. わたしの偏愛
パスタと音楽が大好きです。アルミフライパンを持っており、週に2~3回はパスタを作ります。音楽はオルタナティブ・ロックが好きで、ライブにもよく行きます!
Q3. 今後commonoというフィールドでやりたいこと
北海道のクリエイティブを産業化していくために、会社の垣根を超えて学び・つながり・高めあう。そんな文化を札幌の街につくっていきたいです。

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