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デザイナーとしてマーケティングを考える(2)PDCAサイクルは現代にも適用するか
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2017.05.12

デザイナーとしてマーケティングを考える(2)PDCAサイクルは現代にも適用するか

こんにちは、commonoデザイナー/翻訳者の内村です。
デザインとマーケティングとの関連でいくつか小さな記事を書いている第二弾です。今回はPDCAについて簡単にまとめたいと思います。
PDCAについては、少しでもマーケティングやマネジメントに携わったことのある人であれば聞いたことがない、という人はいないでしょう。私も今まで働いた企業で研修を受けたときには必ずこの考え方を習う授業がありましたし、私自身がそのような研修を新入社員の方に行ったこともあります。
ただ、これを踏まえて実際の業務に入っても、実践できているという会社やチームは極めて少ないのではないでしょうか。PDCAに関しては「すべての物事に共通する重要原則!成功には不可欠!」という考え方と「いやこの考え方はもう古いでしょ。時代に合わないよ」という意見の両方が存在しているように思えます。
なぜ、これほどまでに有名で受け入れられている理論に反対意見も多く存在するのでしょうか。
この点を考える前に、そもそもPDCAとは何か、おさらいしておきたいと思います。
“PDCAサイクル(PDCA cycle、plan-do-check-act cycle)は、事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つ。Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する。”
引用:wikipedia
wikipediaによると上記のような定義がまず上に出てきますね。この定義だけ見ても、このPDCAという手法がいかに誤解されてきているか、少し見えてきます。
まず、PDCAは「生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法」なのであって、その他の目的を当初は持っていなかった」という点を覚えておかなくてはなりません。この考え方を提唱したウォルター・シューハートという人物は統計学者で、現在のAT&TにあたるBell Telephoneの製造部門にいた人物でした。それまでは不良品や故障品が発生したら都度検品で取り除くだけだった工場の体制を見直し、「プロセス品質管理」という概念を導入しました。つまりそれまでミスとして一緒くたに扱われていたものを、制御できるミスと純粋に偶発的なミスに分類し、前者を排除するよう努めた結果、生産性が著しく上がった、この手法を体系化したのが、PDCAなわけです。
PDCAが、成長するための統一理論のように思われがちですが、この考え方のキモは「コントロールできるものの精度を上げる」ということであることを忘れないようにしたいと思います。ですから、「依頼したサイトに思うように訪問が足りないな」という時のソリューションとしては踏襲できる部分がありますが、「今までにない全く新しいサービスをローンチするぜ!」というときにはこのサイクルを追っていてもなにも生まれない、ということがありえます。
またこれが誤解される要因として、”Do”と”Act”の二つの言葉に対してうまくおさまる日本語の単語がない、ということがあげられるかもしれません。”Do” には”Just do it” のような、「とりあえずやってみる」というニュアンスがあるのに対し”Act” には「布告、法令」などの意味や、「演じてみる」という意味もあるので、少し人為的に定められたものをやる、という意味あいがあります。これを、「実行」「改善」と訳しているのですが、これだと、ちょっと改善からのサイクル感が生まれにくい気がします。この考え方で一番重要ともいえる「最後のAから次のPに行くステップ」が、感覚的に理解しずらいため、最後のAで良いと思えば、それで終了というような傾向が生まれているのではないか、と思っています。
さらに、PDCAサイクルの大きさをどう捉えるかが難しい場合もあります。例えば上記のようにwebサイトで設定した顧客層の反応が良くないように思える場合、その解決策としてPDCAだけを行うなら、「これが原因じゃないかな」という仮説をたてて次のサイトをつくり、とにかく運営してみて、ダメなら別のサイトということを繰り返すことになり、コストと時間がどんどんかさんでいきます。自分でデザインやエンジニアリングができるというのであればそれも良いでしょうが、個人や中小企業で運営している場合は、一度ローンチしたページを簡単に大きく変更するというのは難しいものです。そうこうしているうちにトレンドが移り変わってしまうとか、他社に先を越されてしまうということもあり得るでしょう。盲目的にPDCAを導入するよりは、分析やプロトタイピングを十分におこない、一般的に言われている最初の”P”のなかで、ミクロレベルのPDCAを何度か回してから大きな”D”に進む、という適用の仕方もあるのかもしれません。
すこし誤解を生む理由について書きすぎてしまったため、PDCAに対してネガティブな記事のようになってしまいました。しかし、時と場所、サイクルの周期についての考え方さえずれていなければ、PDCAは今でも有効な方法であると言えるでしょう。あと、個人的な経験からすると、それぞれのフェーズにおいて目標を値にすることが忘れられがちな気がします。「なんか良くなったかな」では次のサイクルを回すモチベーションが生まれにくいものですので、「この部分がこれだけ改善された!」という統計が、PDCAには不可欠な要素かと思います。いずれにしても、1940年代に提唱された考え方が、今なお実践的に当てはめられていることには驚きさえ感じます。
もうひとつ、デザイナーとしてPDCAから学べる大きな点は、「完璧主義にならない」ということかと思います。完全をあまりにも求めると、自分の美学だけが先行する、独りよがりのデザインが生まれてしまいます。デザインには正解はありません。訴えたい対象、訴えるコンテンツ、時代性によって変化し続けるのがデザインですから、到達点というのは原理的に存在しないことになります。試行錯誤と言い換えても良いのだと思いますが、常に変化し続け、上昇を続けるというPDCAの考え方は、クリエイティブな分野においても重要かと思いますね。

Written by
Shun Uchimura

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