デザイナーとしてマーケティングを考える(1)デザインの説得力とは
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2017.03.24

デザイナーとしてマーケティングを考える(1)デザインの説得力とは

こんにちは、commonoデザイナー/翻訳者のうちむらです。先日まで妻(デザイン素人)の実家がある金沢に行ってきました。金沢は前田利家のお膝元として知られる古都で、戦国時代から変わらぬ景観や、創業ウン百年のお菓子屋さんなど、古くからの日本の良さを楽しめる町です。
金沢駅でお土産を見て歩いていたところ、ふと妻(デザイン素人)がお菓子のパッケージング(かわいい)を見て、「でも、これって京都とどう差別化するんだろうね?」と言っていました。確かに今までは「小京都」と言われ、「京都に行けない近場の人がそれっぽさを感じる場所」というアイデンティティで良かったのですが、現在は新幹線の開通に伴い、そこから次のページを開けなくてはいけない時期に来ています。「京都では味わえない日本」の演出が必要になっているのが、今の金沢のデザイントレンドなのかなと感じました。
上記は、デザインとマーケティングの関係の深さが、デザイナーでもマーケッターでもない人にも潜在的に理解できているひとつの例と言えます。デザインとは、基本的に商業的な行為であり、あるデザインの目指すゴールとは、マーケティングにもとづいている「べき」であると言っても過言ではないでしょう。
マーケティングとはそもそもなにか復習しておくと、
”企業などの組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする」ための概念である。また顧客のニーズを解明し、顧客価値を生み出すための経営哲学、戦略、仕組み、プロセスを指す。”
参照:wikipedia
ということです。乱暴にまとめると「どのように顧客に価値を提供するか」を「体系的に考える」こと、ということになるでしょうか。
それに対し、デザインとはなにかということについては、スティーブ・ジョブズがきれいにまとめています。

”Design is not just what it looks like and feels like. Design is how it works.”

「デザインは、ただ見え方やどう感じるかということではない。それがどう作用するかなんだ。」という感じでしょうか。この言葉はデザインの存在する目的の核心を、シンプルについています。デザインはすべて目的があって存在しており、それを達成しているかどうかが、グッドデザインとバッドデザインを分ける、ということになります。
例を見てみましょう。Facebook等でよく見る、恋活サイトへのバナー的なものをちょっと作ってみました。

(ex-a.jpg)

(ex-b.jpg)
見た目がきれいなのはどっち?と聞かれたら、おそらくaを選ぶ人が多いでしょう(作成にも2倍以上時間がかかかっています)。しかし、バナーをクリックする数を比較すると、多いのはターゲットに響くキャッチが書かれているbになるはずです。
これはバナーだけの話ではありません。ターゲットを設定し、それを訴求できていなければデザインは独りよがりになってしまいます。逆に、それが出来ている(つまりマーケティングを踏まえている)デザインであれば、そこに説得力が生まれます。「どうしてこのデザインにしたのですか?」と聞かれたとき、そこに答えが常に用意されている状態になるのです。
・どんな人に?
・何を?
・なぜ?
・どんなタイミングで?
伝えたいかによって、デザインは変化します。そうすべきでさえあります。これをクリアすることを、「説得力のあるデザイン」といい、ただきれいなだけで上記の答えが用意されていなければ、「独りよがりなデザイン」と言われてもしょうがありません。
説得力のあるデザインを心がけるなら、そのデザインは次のように変わります。
・きれいな「だけ」から「シズル感のあるデザイン」へ
シズルとは、ステーキを焼く時の「ジュージュー」という音のこと。ターゲティングが十分にされていれば、思わず触れてみたくなる、購買欲をそそるデザインを生み出すことが出来ます。
・見た目「だけ」から「総合的なアイディア」へ
そのデザインでうまく集客効果が上がらない場合、マーケティングセンスのあるデザイナーは、単に見た目を変化させるだけではなく、様々な角度から見ることで「解決策をデザインする」ことが出来ます。上記の恋活サイトなどでは、20~30代女性にターゲットを絞ることが必要であり、それ以外に訴えてもあまり意味はありません。もちろん、実際の判断はもっと複雑で、過去の成功/失敗事例をよく知っていること、それを実際のプロジェクトにどう反映させるかを判断できる知識と経験をもつ必要があります。そのような舵取りができるデザイナーと仕事ができるなら、依頼する企業にとってそれは「あたり」といえるでしょう。
・「当てずっぽう」から「数字の分析に基づくデザイン」へ
数字とデザインの相関を深く理解しているなら、データを見て的確な分析をできるようになります。webサイトを運営しているが集客や購入があまりない場合、独りよがりなデザイナーだと「こんなに格好いいのにわかってもらえない」で終わるか、「トレンドを意識して変えてみました」というやはり独りよがりな変更の二択になりがちですが、マーケティングセンスがあるデザイナーの場合は、どこに問題があるか、ファーストビューへの引き込みができていないのか、その次の階層に行く時に離脱しているのか、購入手続きが複雑なのか..といった原因を詳細に把握でき、結果的を射た改善ができるようになります。
どんなデザイナーにデザインを依頼するかは集客や購入という価値に直結します。きれいなデザインをつくれたらOKという時代は終わっています。デザイナーという仕事は、今後より一層総合的なセンスが求められていくでしょう。commonoも、この大きな流れに遅れないよう、新しい知識や考え方、視野を広げる努力を忘れないようにしたいと思っています。
冒頭で述べた金沢の差別化ですが、わたしとしては、京都と金沢の他に、東京が「日本」や「和」をどのように打ち出しているかを分析することで金沢が何をしようとしているのかが見えてくると思います。
東京は江戸時代に代表される「活気」や「ユーモア」を打ち出しています。そのために他の2都市とくらべ、色味はビビッド、男性的、前衛的なデザインで「和」を表現しているように感じます。同じ理由でジオメトリカル、二次元的表現も多いです。
京都が打ち出しているのはその「品」と言えると思います。圧倒的な歴史の長さ、貴族により確立された文化ははんなりとした中間色、曲線を主体とした字体やグラフィックで表現され、男女でいえば女性、それも幾分人生を重ねてきた、抑制された色気をたたえている、そんなデザインが多いように思います。
それに対して金沢は、東京よりも京都よりではありますが、明確に京都と違うデザインの基軸を持っているように思います。女性的ではありますがそれは円熟した女性というより「女子」という表現がぴったりくるイメージで、気品というよりポップ、曲線的というより丸っこい感じです。図形も多く使用されていますが、円を基調としたシンメトリーなものが多いのも、女子感への訴求なのでしょう。
もちろん自治体としてデザイン指導を行っているわけではないのでしょうが、デザインに「これがこの街っぽいよね」という暗黙の了解があるのは面白いと思います。これが「北海道」と「札幌」でもまた微妙に違うだろうし、同じ石川県でも加賀とか能登になると結構違うでしょうね。
次回は、企業人におなじみ「PDCAサイクル」をデザイナーとして分析してみます。

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