2017.03.06
UXデザイン(3)営業からUXへのパラダイムシフト
こんにちは、commonoデザイナー/翻訳者の内村です。
UXデザインについての第3話となります。実例を交えて、UXデザインが今や、既存の営業やマーケティングから「主流」の座を奪おうとしている「パラダイム・シフト」となりつつあると言える根拠を紹介していきます。
従来の営業法を一言でいうと、それは「説得」なわけです。論拠をならべ他のサービスより優れている理由をのべ、オプションサービスをつけ、「今なら–%お値引きできます!」とやって、契約を勝ち取る。PCなんかもそうですよね。「CPUのスペック、HDDの容量、画面の解像度はこんなにありますよ!それでこのお値段!お得!限定なので今だけ!さあ買って!」
この方法でものを買ってもらうのはダメというわけではないのですが、長い目でみると体力を消耗しそうなのは、なんとなく想像つきますよね。果てしない競争のスパイラルに巻き込まれ、大企業が参入してくるとひとたまりもない。新しい企業がこの方法でやりあうのはもう無理、と考え始められているのが、今の時代です。
では、どうすればいいのか。
アメリカで「スタートアップ」と言われるビジネスのモデルがあります。スタートアップを一言でまとめると「新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長とエクジットを狙う事で一獲千金を狙う人々の一時的な集合体」ということで、やや眉唾な印象もありますが、実績はその手法が利益を確実にあげるということを示しています。彼らがやってきたことを見直してみると、これまでの手法と完全に軸足が違うということがわかると思います。
社名やサービスでいうとUBER、Airbnbやテスラなどがそれに当たりますね。まず彼らはいわゆる営業を行いません。特にアメリカだと国土が広すぎるため、対面で会うのが非効率すぎるんですね。また、今の購買層は広告や営業といった、マーケティングのにおいのするものを嫌がる傾向にあります。服屋に行って、店員につけまわされたりするのって嫌ですよね?webの世界でも芸能人やフリーライターが唐突に、「この商品すごいよ!試してみて!」とやる、全くステルス感のないステマを見てきているので、それを感じ取った瞬間に拒否反応が出てしまう、今の時代のビジネスは、そのような世代の感覚を念頭におかないと、あっという間に化石となってしまいます。
そんな現代において、マーケティングの核となるのがUXデザインの考え方です。あえて日本語にすると、「ユーザ体験をデザインする」ということです。「とびきりの体験を演出する」、と言い換えてもいいかもしれません。
これがなぜ有効かというと、「最高のUXを提供すれば、そのユーザがプロモーションをしてくれる」から、ということになります。「ここの店員さんにこんな対応をしてもらった!神!」とか、「ここの製品は、こんなことまでしてくれるんだ!」「このサイト面白い!」あるいは、「ここのゆるキャラ超うける!」でもいいんですが、こういう経験をしていくと、「こんなの知ってる?」と、他の人に知らせたくなりますよね?いわゆる「口コミ」ですが、これを演出していくことでユーザさんが(無料で!)最高の営業をしてくれる、この循環を狙うわけです。これを偶然にまかせるのではなく、「デザインする」というところにUXデザインの現代性があります。
例えば前述のUBERは、もともとは今のようなタクシーに変わるサービスではなく、「リムジンの時間貸しサービス」でした。値段設定も非常に高いものですが、最高の車両とドライバーのホスピタリティを提供し、まずはサンフランシスコあたりの富裕層にしぼったサービスを開始したわけですね。
UBERのこの事業がUXデザインの好例であると言える根拠は、「この時点で、もっと裾野の大きなサービスへの転換を視野に入れていた」ということにあります。まず西海岸の富裕層に最高のサービス、他ではなかったような体験をしてもらい、それが口コミで広まる。ニッチな市場で成功し、だんだん評判が広まっている間に、本丸であるタクシー事業への転換の準備(システムやアプリの充実)を行い、気が熟したところ(十分な認知度を獲得したところ)で、一気に顧客層を広げたわけです。
おそらくUBERのビジョンはタクシーサービスで完結ではないでしょう。「自動車の運転」のからむあらゆるサービスを牛耳ってしまう、という目標があるはずです。気がつけば日本でも、焼きいもやたこ焼きの移動販売車がすべてUBERになっている、という時代が来るかもしれません。
ここまでがUXデザインで描ける全体のビジョンということになりますが、やはりスタートは「的を絞った顧客への最高の体験の演出」なのです。前回お話ししたUXハニカムの7つの側面すべてで「満足」を超えた「感動」のレベルまでレベルを引き上げるのがなぜ重要か、わかるはずです。
あるひとりのユーザに、「親しい友達3人に拡散したい」と思えるほどの感動を伝えることができたら、そしてそれがその次の友達…というふうに広まるなら、どうでしょうか。ひとり1日3人として計算しても、1週間で3279人に、10日でなんと88572人に話が伝わります。「営業」や、「広告」などよりも軽視できるような数字ではないということがご理解いただけるのではないでしょうか。
さらに言えば、先ほど「口コミ」という表現をしましたがこれは厳密には不正確で、今の時代のユーザは一人一人が情報を拡散するメディアを所有している、と考えるべきです。twitterで、instagramで、LINEでどんどん情報は拡散していきます。ひとつの「神対応」が、どんな営業マンも叩き出すことができないような利益をもたらすことがある(もちろんその逆に、ひとつのダメな対応が足元をすくってしまうこともあるのですが)、そういう時代を私たちは生きている、という前提に立って商売をする必要があるんですね。これをコントロールすることに成功したUBERは、こんな成長の推移を示していますが、これは決してラッキーパンチなどではなく、狙って設計したものである、ということです。
UXデザインという考え方は、この3年以内で、確実にマーケティングの主流に台頭します。
・“モノ”ではなく“サービス”を届ける
・既存の広告のような受け身型ではなく共感できる体験型のメッセージを届ける
・体験したユーザーからが配信するメッセージを活用する
これらの手法はもはや「目新しい考え方」などではなく「必須」となっていくでしょう。では、実際にユーザが触れるもの(製品、サービス、店舗など)は、具体的にどのようにデザインしていけば良いのでしょうか。
次回のジャーナルで取り上げたいと思います。
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