オウンドメディア(2)押さずに、引き込む。
Thoughts

2017.05.13

オウンドメディア(2)押さずに、引き込む。

こんにちは、commonoデザイナー/翻訳者のうちむらです。
オウンドメディアについての第2話です。前回は、読み手側に立ったコンテンツの選択方法について考えました。今回は、事例をいくつか引き合いに出し、どのような展開をすれば良いのかを探っていきましょう。
まず、失敗するオウンドメディアとは、という部分をちょっとおさらいしておきます。箇条書きにすると、こんな感じでしょうか。
・商品やサービス紹介ばかり書いてしまう。
広告の文章となんら変わらない内容のコンテンツで埋めてしまうパターン。最近の消費者は「売らんかな」の姿勢を敬遠します。
・顧客価値が不明確
読み手がメリットを感じる内容になっていない。内容が良くても、「パッと見」で良くない判断をされてしまうと、読者が去って行ってしまいます。
・分かりづらい
文章だけの話ではなく、デザインやUIが使いやすい、コンテンツにアクセスしやすいものになっているかを考えましょう。
自分たちのプランに上記のような要素がないか見直し、あれば計画段階で極力排除していきましょう。3つに共通する考え方は、「独りよがりにならない」ということです。ユーザ志向を優先して追求することが、オウンドメディア成功の鍵と言えます。
この考え方を下敷きにして、成功しているオウンドメディアの例を考えていきたいと思います。国内での成功しているオウンドメディアについては、結構大きめの企業が人材を投入してやってる例が多いので、方法論をそのまま持ってきても敷居が高いと感じそうです。今回は、海外の例をいくつか挙げてみましょう。
例1. REYNOLDS
https://reynoldskingdomofgolf.com/
アメリカジョージア州の郊外にあるゴルフ場です。広告予算もそれほどなく、マーケティング担当もいない、田舎のゴルフコースだったレイノルズですが、ブログ、eBook、動画配信といったメディア発信を行った結果、導入後9ヶ月でサイト訪問者は50倍、ゴルフスクールへの問い合わせ・申込みが大幅にアップしました。
サイトをのぞいてみると、プレイ料金等やコースの説明はほぼなく、ゴルフ講座・クラブフィッティング・子供向けレッスン・企業イベントが主な紹介内容になっています。料金も決して安くはないですが、需要にミートしている印象ですね。ユーザが本当に欲しいのは何か、UXに重きを置いている感じ等、マーケティングに関して素人の人がやったとは思えない、見事なコンテンツの選び方だと思います。
例2.
River Pools & Spa
http://www.riverpoolsandspas.com/swimming-pool-videos
アメリカヴァージニア州のプール会社です。一般住宅の庭に設置するプールを施工するのですが、予想できるようにリーマンショックの際経営危機に陥り、TVCMやリスティング広告の費用を10分の1に抑えざるを得なくなりました。そこで、広告費をオウンドサイトの充実に振り分け、質の高いブログや動画を制作しました。
ブログの題を少し上げていくと、こんな感じです:
「ファイバーグラス・プールのメーカーtop10」
「コンクリート、ビニール、グラスファイバーのどれが一番いいの?」
「グレコ社による、僕らの顧客満足度調査を公表するよ!」
「ファイバーグラスプールがひび割れ、水漏れした場合の簡単な修理方法」
などなどです。中には競合他社の特徴などを扱っている記事もあり、このサイトに行けば、自宅プールの設営に関してはほぼ知識が完結する、という内容になっています。おそらくアメリカでプールを設営したいなら、この会社に頼もうが頼むまいが、まずこのサイトに行って情報を得るのが一番、という感じになると思います。オウンドサイトがそのような存在になったら、しめたものですよね。事実、このブログを30記事以上読んだ顧客の成約率は80%を超え、リーマンショック以前の数字以上の過去最大の売り上げを達成しています。
もうひとつ例をあげましょう。
例3.
mint
https://www.mint.com/
mintは、資産管理サービスを提供する企業です。想像に難くありませんが、このようなファイナンス系のサービスは信用がモノをいいますから、後発やベンチャーには不利なフィールドです。しかし、mintは現在、アメリカの個人資産管理サービスの中心的企業になっています。スマホ中心で管理できる使いやすいUIも大きな理由のひとつですが、オウンドメディアの観点で言うと、この会社はブログの充実がものすごいことになっています。資産運用に関する具体的で役に立つ記事が、現時点で3500以上掲載されています。
直近のブログ記事はこんな感じ。
「テスト:あなたの資産を読み解く力はどれくらい?」
「海外旅行の予算を捻出する方法」
「ペットを飼うことに代わる4つの素晴らしい選択」
「貯金ができるようになる考え方&行動のコツ」
ファイナンシャルサービスと関連するものの、決して営業だとか、自分たちのサービスさえ使えば解決するよ、という種類の情報ではありません。しかし、このコンテンツの充実のため、mintはフルタイムの編集スタッフと多くのフリーライターを雇い、2日に1記事の割合で更新を続けています。結果、若い層の信頼と知名度を勝ち取り、2年間で200万ユーザを獲得、業界トップ企業となりました。
いかがでしょうか。成功するオウンドメディアに共通する要素を見つけることができたでしょうか。「徹底した顧客目線」「その分野では負けない、と言える情報の量と質」、また、「コンテンツ重視のデザイン」というのが、上記3つには共通していると思います。
コンテンツを掲載する際に「ユーザに役立つ」とか「ユーザの興味をひく」といった要素が「商品と関連している」という要素よりも優先度が高い場合さえあります。「お客様にものを買ってもらう」ことではなく、「見込み客をできるだけ大勢引き込む」ことが主眼だからなのですが、さて、自分たちのコンテンツには、そのような引力があるでしょうか。
今食べてるスイーツを上げて喜ばれるのは芸能人やモデルだけです。商品がほしければ販売用サイトでポチッとするでしょう。オウンドメディア展開でめざすのは、押して契約をとる営業ではなく、潜在的な顧客を引き込むポータルの設置と捉えましょう。
次回は実践編として、人数の少ない企業がオウンドメディアをどう展開するか、考えます。

Written by
Shun Uchimura

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