2017.01.31
デザイン・シンキング(4)
こんにちは、commonoデザイナー/翻訳者のうちむらです。
デザインシンキングもやっと終盤に入ってきました。今回は5回目として、「プロトタイプの作成」について考えます。前回までにニーズにもとづいてアイディアを出し、それを練るところまでやってきましたが、これを「他の人と共有できるようにする」のがプロトタイプの目的といえると思います。自分と他人、あるいは提案者とクライアント双方の意識の間にあるキャズムを乗り越えるということですから、イノベーションと同様、踏まえないといけない重要な段階と言えるでしょう。
プロトタイプのためには、果たして何を作ればよいのでしょうか。なにも製品化寸前である必要はありません。簡単に言えば、「ユーザにサービスを提供する」「社内でサービスについて話し合う」用件を満たすものであれば、すぐにでも実装可能なレベルのものでなくとも良いのです。そのようなプロトタイプには例えば、
模型であったり、
ペーパープロトだったり、
ストーリーボードのようなもの
などがあげられます。
効果的でさえあれば、ホワイトボードに書かれた図のようなものでも、プロトタイプとして機能することがあります。プロトタイプの段階で重要なことは、そのクオリティよりも、「すぐ作る事が出来る」「すぐに改善出来る」ということが重要です。たたき台として有用性の高さは製品の質とは異なる、ということを覚えておきましょう。
そのような意味で、プロトタイプを作る時にはその見た目よりもユーザ・エクスペリエンスを重要視する必要があります。ユーザがこれから実現化するサービスを「試している」という感覚になることがなにより重要です。そうすることによって私達には、ここが使いづらい、ここをもっとこうして欲しいといったフィードバックが、製品化する前に手に入るというメリットがあります。自分のもっているイメージを自分にはない角度からも見る事が出来る、これができればそれは、優れたプロトタイプと言えるでしょう。
そのような優れたプロトタイプをして、デザイン・シンキングの世界では「オズの魔法使い型プロトタイプ」という言葉が使われます。
「オズの魔法使い型」という言葉はIBMのワトソン研究所の研究者だったジェフ・ケリーによって最初に用いられたもののようです。ずいぶん古い映画になるのでご覧になっている方は少ないかもしれませんが、映画版の同作品の最後で、恐ろしい姿をしたオズの大魔法使いがあらわれます。この世界では全能の存在とされているオズの大王ですが、実はそれはハリボテで、主人公のドロシーがカーテンをめくると、小さな老人がついたての向こうで操作していたのです。
そのような種類の「仕掛け」があれば、プロトタイプの効果性はおおいに増します。システムやUI「そのもの」をつくるのには時間もコストもかかりますから、できるだけ修正はせずに納品したいものです。その代わりに、プロトタイプの場合は、「ある程度動作、体験を再現できる仕掛け」を用意することによって、ユーザにそれを「仮想的に体験」させることが出来るのです。
以上がプロトタイプの概観、ですが、もしかしたら「プレゼン資料」の作成と似ている部分がある、と思われたかもしれませんね。確かに、建物や施設のデザイン時にはミニチュアを作ったり、2Dのプロトタイプを作成することもありますから、考え方に近い部分はあるかもしれません。しかし、プレゼン資料とプロトタイプは目的において異なります。プレゼン資料の目的は「売る」ことですが、プロトタイプの目的は、「フィードバックをもらう」ことです。なので、それぞれの目的に向かって体験してほしい、見て欲しいポイントが異なってくると思います。プレゼンの場合はその最中に自分にとって盲点だったところをつかれるとあせりますが、プロトタイプの場合ではその「盲点の指摘」こそがまさに欲しいものだったりする訳です。
なにはともあれデザインシンキングのこの部分は実践してみないと身に付かないものですので、身体感覚で覚えてしまう、という気持ちでやっていくといいフェーズといえると思います。
さて次回はいよいよデザインシンキングのまとめです。実現が近づいたあなたのサービスをテストするときに必要な目線についてお話しします。よろしくお願い致します。
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